2013年7月17日水曜日

消費税増税は小売業にどう影響するか

2014年度からの消費税増税に合わせて、消費税増税分の価格転嫁を円滑にするために、「消費税還元セール」を禁止する特別措置法案が2013年6月5日に成立している。

企業における消費税の納付額は、
「顧客から預かった消費税」-「取引先に支払った消費税」=「納付すべき消費税」
という計算式になっており、各中間業者が皆そのようにすることで、最終的な消費者に負担が帰属する仕組みになっている。
これは、多段階累積控除と呼ばれる仕組みだ。

この仕組みの中で、消費税増税分を価格転嫁すれば、企業側に負担は生じない。
なぜなら、預った消費税はそのまま納めれば良いし、支払った消費税は控除できるからだ。

一方で、消費税増税分を価格転嫁せずに税込価格をそのまま据え置きにすれば、本体価格が減少して消費税額が増加することになり、消費者ではなく企業側に負担が生じることになる。
取引過程の上流に位置する企業では「預かった消費税」が増えたとしても「支払った消費税」も増えていれば影響は少ないが、下請になればなるほど「支払った消費税」で控除する機会が乏しくなり負担が大きくなる。

消費税の本質は消費者が負担をすることにあるから、消費税の増税時には増税分を価格転嫁して最終的に消費者に負担させることが、政府の想定する姿だ。

ここで懸念されるのが、大手スーパーなどが消費者に価格転嫁をせず、下請け業者にも価格転嫁を認めない場合である。
消費者の離反を恐れ、、「消費税還元セール」などの形で消費税の価格転嫁を行わずに、下請業者にも消費税の価格転嫁を認めなければ、最終的にババを引くのは消費税の計算の仕組み上、下請業者となってしまう。

そのような事態を防止するため、特別措置法案では、「消費税」や「税」といった言葉を用いたセールを禁止している。
また、「税込価格」を表示する総額表示義務も緩和され、「税抜」表示も一時的に認められることになる。

この特別措置法案にどの程度の実効性があるのかは不透明だ。

一方で重要な役割を果たしそうなのが「下請法」による取り締まりをおこなっている公正取引委員会だろう。
下請へ支払う代金を不当に減額したと見なされれば、「下請法違反」となり、多額の遅延利息をとられることになりかねない。

小売業者の消費税増税に関する悩みは尽きそうにない。







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