2013年6月3日月曜日

「ディオバン」論文問題にみる自己レビューの脅威と対策

「ディオバン」はスイスの大手製薬会社ノバルティス ファーマの降圧剤で、世界で年間6000億円以上、日本でも年間1000億円以上を売り上げた大型新薬である。
同新薬に係る論文に不正疑惑が噴出している。

2001~04年に行われた京都府立医科大学、東京慈恵医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学の5大学でのディオバンに関わる医師主導の臨床研究について、ノバルティスの元社員が当時、同社社員の身分を開示せず、非常勤講師として勤務する大阪市立大学の肩書で論文作成に関与していたことが発覚したからだ(ダイヤモンド・オンラインより)

ノバルティスの元社員はデータ解析を担当していたため、データの捏造まで疑われる事態となった。

どんな業界でも自己レビューや自己監査による独立性に対する脅威はつきまとう。
それを法的規制や自主規制により第三者からの疑念を抱かれないように努力している。
このような独立性に係る問題は近年特に重要視され、規制が厳しくなってきたように思う。

一方で、一つの専門分野に特化した人材であれば、その能力から様々なポストに引く手あまたになる。
そういう意味では、規制を厳しくしすぎると人材がうまく活用されなくなる恐れもあるし、自由に反する側面もある。
ただ、あまりあってはいけないことだが、審査機関や行政へ顔が利くことが、評価される場合もある。

規制と緩和のバランスをどのようにするか、独立性の侵害を許さない制度をどのように構築するか、今後の製薬業界の動きに注目したい。

なお、このような問題では、各人の倫理観の醸成を忘れてはならないだろう。
倫理観の醸成とそれによって作り出される風土は、何よりも有効な薬である。

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